lilimo
さきどりキーワード
    lilimo

    「心地よい、絹を纏う」…繭のやさしさに包まれる結城紬

    東京から距離にして約80㎞、栃木県との県境、茨城県西部、今も見世蔵や寺院が点在する風情のある街・結城。

    関東平野の中央・筑波山の裾野を流れる鬼怒川沿いの肥沃な土地は、養蚕が盛んとなり、この地で作られた紬(つむぎ。女性が糸をつむぐ姿を象られている)は、今も昔も高級絹織物として名を馳せる「結城紬」の生産地です。

    1_見世蔵や寺院が点在する結城の地

    「結城紬」の原料は、茹でた繭のいくつかを袋状に引き伸ばした“真綿”から作られる自然素材。

    繭は、外敵や病細菌などから身を護りかつ、快適順調に生育できるよう作られるので、つむがれた原糸は、重なり、絡み合い、ふわふわと空気をたくさん含み、保温性、通気性、吸湿性、放湿性を同時に満たす、カシミアと並ぶ良質な素材です。

    2_真綿から糸が作られる
    真綿とは、江戸時代以降、木綿が一般化する中で、
    “真”の綿として区別するため名付けられた

    真綿から糸をつむぐのに1~2か月。柄によっては、織り上げるのに4か月~2年掛かるというのだから、手間と時間、できあがった風合いに納得感はあるけれども、手仕事で作り上げる反物はとっても高価――。

    そして、どの生産地でも深刻化する後継者問題は、結城でも同じ。

    3_「つむぎの館」内の“古民家・陳列館の内部
    奥順が運営する「つむぎの館」内の“古民家・陳列館”

    物を作る産地の人々の想いと技術を形にして後世に遺したい――と考える、この地に1907年創業以来、今日まで産地の発展に寄与する産地問屋・奥順。

    「結城紬」を普段の暮らしの中で使ってほしいと、新しいファブリックブランド「YŪKI OKUJUN」を立ち上げました。

    4_奥順ののれん

    「YŪKI OKUJUN」が取り扱うのは、伝統と現代が融合する新しい「結城紬」。

    国の重要無形文化財やユネスコ無形文化遺産に登録された、本場結城紬の流れをくみながら、より身近に着られる「結城紬」の商品化に取り組みます。

    「YŪKI OKUJUN」が目指す商品開発

    5_「つむぎの館」内の“古民家・陳列館”外観
    奥順が運営する「つむぎの館」内の“古民家・陳列館”

    ――これまで着物で愛されていた「結城紬」のよさを、もっと身近に、肌に纏うものにできないか

    元々和装に興味があり、既に市場に出回るものではなく、本当に欲しいものを手にしたい。でも実はこの辺りで生まれ育ったので、入社したんですとおちゃめに語る「奥順」の国府田さん。

    ショールの開発には、こんな想いがあったのだとか。

    6_「結城紬 艶・色・温度を楽しむショール」2枚
    「結城紬 艶・色・温度を楽しむショール」
    パープル系(左)、ブラウン系(右)

    「YŪKI OKUJUN」の商品名は、特徴が巧みに表現されています。

    「艶・色・温度を楽しむショール」「育てるショール」は、エイジングの楽しさなどを、和の要素を取り入れたいと日本語にして名付けたもの。

    7_「結城紬 艶・色・温度を楽しむショール」2枚がかけてある様子
    「結城紬 艶・色・温度を楽しむショール」
    ブラウン系(下)、パープル系(上)

    “艶”とは、光沢のこと。
    原材料の真綿から作られる糸だからこそ、摩擦に弱く、毛羽が発生しやすい。しかし、使えば使うほどに不要な毛羽が取れ、光沢を増す。

    ショールを使い込むことで、風合いを育てるという意味が込められているのだとか。

    8_「結城紬 艶・色・温度を楽しむショール」のパープル系のアップ
    「結城紬 艶・色・温度を楽しむショール」のパープル系

    “色”は、光沢や風合いもさることながら、タテ、ヨコと色の異なる糸を使うことで生む、色合いを楽しんでもらいたいという意味合い。

    9_「結城紬 育てるショール」のアップ
    「結城紬 育てるショール」。タテ糸がヨコ糸より太いため、
    すっきりとした印象

    “温度”にしても、特徴である優れた保温性を表現。
    吸湿性、放湿性もありながら、身体が持つ熱を保つので、快適な心地よさを感じられます。

    動力の力をうまく借りながら作り上げる、その工程とは

    「結城紬」のショールを作るのは、結城から車で約30分ほどの鬼怒川沿いの常総市(旧石下町)。

    10_半自動織機
    半自動織機

    ショールを織るのは、約50年前の半自動織機。
    現在、生産はされておらず、故障をした場合は、機織り職人が自ら直すしかないという年季もの。

    「結城紬」のショールのタテ糸は、真綿から作られる紡績糸に生糸を巻きつけ補強したもので、ヨコ糸は、真綿から取った糸。

    それぞれ小麦粉を溶かした液体を揉み込み、2~3時間漬け置き、脱水機に掛け、天日干しをする。
    この糸の下ごしらえ具合により、織りやすさが変わる重要な工程です。

    11_糸を下ごしらえする様子

    一匹の蚕が丸二日間糸を吐き続け、繭を作る糸の長さは約1.2km~2㎞。

    織り始めのタテ糸つなぎ、そして織り途中に切れた糸と糸とをつなげるのに、“はた結び”という技法があります。

    裁縫などと同じよう“玉結び”をしてしまうと生地に凹凸が出てしまう。
    そのため、結んだ時に一番目立ちにくい、この結び方を取り入れているのだとか。

    12_はた結び作業をする女性の姿
    はた結び作業の光景

    糸の準備ができたら、あとは機織り作業。
    習得するのに3年は掛かると話すのは、この道、60年超の大ベテラン、御年80歳超え(実年齢はヒミツ)の機織り職人。

    お昼を食べながらの井戸端会議を楽しみに、毎日9:00~17:30(冬は早めの16:30帰宅)の間、織り続けていると言います。

    13_機織り作業をする女性の姿

    耳栓をして、機織り開始。
    一瞬で左右に動くヨコ糸を目で追い、不要な毛羽などがあれば素早く取り除く。
    上下に動くタテ糸に毛羽が出来ていないか確認するなど、糸の面倒を見る。…説明するのは簡単ですが、それはまさに職人技。
    ぜひ動画でご確認ください。


    機械のスイッチを入れると大音量の機械音が鳴り響きます

    一番難しいのは、絣(かすり)の機織り作業。
    絣とは、織る前の糸の段階で文様になるよう捺染をし、その糸を織り合わせることで表裏ない文様を描いたもの。

    捺染や機織りの際に、一寸でもずれてしまうと絣にならない、とても技量のいる作業は、今でも、大ベテランの機織り職人が担当していると言います。

    14_「結城紬」の絣の入ったショールのアップ
    「結城紬のショール フルーリ アラベスク」

    はた結びや、下ごしらえされた糸、そして機織り機が置かれているのは土間の工房。

    湿気が多いとくっついてしまい、乾燥すると静電気が起きるという糸を扱うのに、とても適した空間、ここから「結城紬」のショールが、生み出されているのです。

    16_工房の土間
    15_どこか懐かしさを感じる土間の工房風景
    終戦後に開業した、どこか懐かしさを感じる土間の工房風景。
    17_おくるみ、帽子、靴下の「結城紬のおくるみセット」

    「YŪKI OKUJUN」には、生まれたばかりの赤ちゃんにもやさしい、ニット用の真綿の糸を使用した、頭の保護ができる三角フード付きのおくるみ、帽子、靴下の3点が入った「結城紬のおくるみセット」もあります。
    無垢な肌だからこそ、手仕事のぬくもり、温かさが伝わるおくるみで、そっと包んであげてください。

    18_結城紬のショールを羽織る女性の姿

    心地よい、絹を纏う――

    絹織物「結城紬」の内に秘めた輝き、そして軽さやあたたかさを、その肌で感じてみては、いかがでしょうか。

    この記事を書いた著者
    lilimo
    lilimo編集部
    あなたの知らない「もっと」に応える情報をlilimo(リリモ)編集部スタッフがお届けします。